コラム

道具は身を助ける

昔から「芸は身を助ける」と言いますが、私の母は、子どものときから「道具は身を助ける」という考えの人でした。


小学生の時、彫刻刀の販売があれば、希望販売で頂いていたプリントの中で一番高価なものを選び、
そろばんの授業で使うそろばんの販売があれば、やはり一番高価なものを選んでくれていました。


そろばんは、授業では数回しか使いませんので、驚いた担任の先生は、わざわざお電話までくださいましたが、
切れ味がよくない彫刻刀を使えば、却って手をケガするかもしれない。
そろばんは滑りの良いものを使わないと、上達しない。と、当時先生に答えてくれていました。


ピアノも同様で、そろそろグランドピアノが必要ですねと、小4の時に先生からご教示頂きましたら、
「わかりました」と悩むことなく用意してくれました。



その後、当時の彫刻刀とそろばんはまったく生かされていないことを、申し訳なくも思いますが、
殊グランドピアノにおいては、早くに用意してくれたことを本当に感謝しています。


「よい道具にはよい理由がある」というのが、母の哲学のようですが、
本物の芸を身に付けようと思えばこそ、よい道具は必須であることは、私が成長したときに知るのでした。


私は、ドイツの製品が好きですが、マイスター制度の下、誇りをもって作られたものには「魂」が宿っているように
感じるからでしょうか。
その魂を引き継ぎ、新たな「もの」を作り出していく感覚がとても好きです。

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